家具の循環の鍵は“良いものを見極め大事にする姿勢”。「デザインを使い捨てない社会」の実現のために
インターオフィスは、2025年に創業50周年を迎える節目に、Mission・Vision・Value(MVV)を新たに定義しました。
後編となる本記事では、インターオフィスが掲げるMVVをどのように事業へ落とし込み、循環型の仕組みを構築しようとしているのかについて、取締役社長COO・片居木亮に聞きました。
※この記事は「前編」からの続きです。まだお読みでない方はこちらから
MVVをどう実装し、何を伝えていくか
言葉だけでは終わらせない──行動指針としてのValue
サステナビリティへの意識というところでいうと、視察にも行かれたヨーロッパのほうが高い印象があります。
片居木:全体的なサステナビリティへの意識という意味では、たしかにヨーロッパのほうが一歩先を行っている印象があります。ただ、日本にもサステナビリティに非常に積極的な企業や個人は多いので、一概に“ヨーロッパが上、日本が下”と言えるわけではありません。ヨーロッパは国同士の距離が近いぶん、プロジェクトの共有や共同研究がしやすく、学び合いが自然に起きやすい環境なんですよね。そういった特徴が、取り組みを加速させている理由のひとつだと思います。
そのような中で、Value(バリュー)について込めた思いを教えてください。
片居木:今回、Valueには「可能性を追求し、提案する」 という言葉を選びました。循環型の社会をつくっていくには、まだ前例のないことにも挑戦し続ける姿勢が必要です。 だからこそ、常識にとらわれず、行動しながら学んでいくことがとても大切になってきます。いわゆる「 learning by doing──やりながら学び、学びながら前に進む」、そんなスタンスをインターオフィス全体の行動指針として掲げました。
“循環”を支える現場のノウハウと家具選定
MVV策定の過程で苦労した点はありますか?
片居木:MVVの策定を、外部のコピーライターにお願いするという選択肢もありました。でも、せっかく新しいMVVをつくるなら、“自分たちの言葉でつくりたい” という気持ちが強かったんです。そのため、役員同士でかなり密に議論しました。
「私たちの事業の本質は何か」
「何を未来につなぎたいのか」
何度も言葉を磨きながら、納得のいく形に仕上げていきました。もちろん、この言葉が社内外に浸透していくには時間がかかると思います。でも、自分たちでつくったMVVだからこそ、時間はかかってもしっかり育てていけると確信しています。
MVVに基づく事業である家具のサブスク事業(fittingbox)の位置づけは?
片居木:家具の循環を実現するには、まず大前提として、家具は私たちが取り扱うようなデザイン性に優れたものである必要があります。
デザインが良くて、丈夫で、普遍的で、環境負荷も少ない──そうした家具でなければ、使い手に大切にされず、循環して戻ってきたときまで価値が保てません。そんななか、インターオフィスはこれまで、世界中から“デザイン性に優れた家具”を選び抜いて紹介してきました。実はこの、良いものを見極め大事にする姿勢と、家具の循環は、とても密接に関わっています。 そもそも家具を長く使っていただくことこそが環境負荷を下げる一番の方法だと思っていますし、そのためにインターオフィスでは修理やメンテナンス、クリーニングにも力を入れてきました。
つまり、今回の循環事業には、その土台となるインターオフィスの長年の実績や経験、大事にしてきた価値観があるんです。
例えば、買い取りで戻ってきた家具をどう扱い、どこまで修繕すれば再び循環できる家具になるのか、それを見極めるプロセスに責任を持てるのも、長年デザイン性の高い家具を扱ってきた私たちの強みだと感じています。自社倉庫には新しくリペアスペースもつくり、循環の体制を本格的に整えました。こうした一連の流れをつくることで、例えばオフィス家具のサブスク事業はMVVの中心にある「循環性」を実現するための重要な仕組みになります。
購入後に使わなくなった家具を買い戻したり、レンタルで再び別の会社へ届けるなど、仕組みさえあれば、廃棄は大幅に減らせますし、それは社会的にも非常に大きな意味を持つと考えています。
循環を支える“愛着”というキーワード
家具を“使い捨て”にしない選択が当たり前になる社会へ
家具のサブスク事業は今年で6年目になりますが、以前は「すぐ借りられる便利さ」が注目されていました。ところが最近は“循環していく価値”がより受け入れられてきたと感じます。
片居木:そうですね。最初の数年は“便利さ”が中心でした。もちろんお客様のビジネスに合わせた柔軟なオフィス環境を作ることには貢献できると考えています。また、所有しないことによる「資産管理の適正化」や、将来的な「廃棄コストの削減」といった実務的なメリットも、導入のきっかけとして評価いただいています。ただ、それ以上に変化を感じるのは、 お客様も「家具を循環させる」という価値そのものにも共感してくださるようになった点です。
たとえば、1つの家具をA社が使い終わったら、クリーニングや修理を経て次はB社へ。また役目を終えたら別の用途に回し、最終的には素材ごとにリサイクルする。こうした流れができれば、いわゆる“大量廃棄”は確実に減っていきます。 これはオフィス家具の世界では、とても大きな変化だと思います。

“愛着”が循環の原動力になる、という研究結果がありますね。価値が低く愛着を持ちにくいものほど循環しにくい、と。
片居木:おっしゃる通りです。家庭でも、愛着のあるものって自然と長く使いますよね。オフィス家具は「自分のものではない」という側面があって少し難しいのですが、サーキュレーションエコノミーの研究では、“愛着のないものは続かない”という指摘が多いのも事実です。インターオフィスが扱う家具には、イームズやパントンなど、デザイン史に残る名作がたくさんあります。そういった家具は、そもそも“愛着が生まれやすい”要素があります。しかも、今のオフィスは、家庭のように“居心地の良さ”を重視する傾向が強まっています。そういった流れの中で、オフィスにも名作家具が選ばれる場面も増えています。 結果として、愛着が生まれやすい家具を扱うこと自体が、循環事業の成功にもつながっていると感じます。
別プロジェクトのインタビューでも、クライアントから「インターオフィスは家具への熱量がすごい」と評価されていました。
片居木:嬉しいですね。長く大切にされてきた家具は、自然と愛着が生まれますし、そういった流れが家庭からオフィス空間へと広がっている印象があります。そんな中で私たちとしては、循環の仕組みを整えることで、家具の価値を「次の世代へつなぐ」ことができる。 これこそがインターオフィスらしい社会への貢献だと思っています。
今回は、創業50周年の節目に新たな言葉で表現されたMVVについて、社長の片居木亮に話を聞きました。
急ぎ足で変化し続けるこの時代に、「受け継ぐ」という視点を持ち続けるのは、簡単なことではありません。それでも、空間や家具が私たちはその可能性を信じたいと思います。サステナブルな社会のために、次の世代に何を「残し」、何を「受け継いでいく」のか。
MVVに込めたこの問いが、これからの空間づくりの選択に、少しでもヒントを与えられたなら──。そんな想いとともに、私たちはfittingboxの取り組みを続けています。
