「デザインを次の世代へ」。インターオフィスが今、MVVを刷新した理由

「デザインを次の世代へ」。インターオフィスが今、MVVを刷新した理由

インターオフィスは、2025年に創業50周年を迎える節目に、Mission・Vision・Value(MVV)を新たに定義しました。

これまでも、単なるオフィス家具の輸入・販売にとどまらず、空間を通じて“思想”や“文化”を届けてきた私たち。その延長線上にある今回のMVV刷新には、「これからの時代に何を大切にするのか」「どのような価値を次の世代に手渡していくのか」という問いに対する、ひとつの答えが込められています。

オフィス家具の大量廃棄問題と、サステナビリティを「仕組み」として捉える視点、ヨーロッパ視察を通じて感じた危機感、家具の循環の肝となる“良いものを見極め大事にする”姿勢──前編となる本記事では、MVV策定の中核を担った取締役社長COO 片居木亮に、MVVに込めた思いやサステナビリティへの考えを聞きました。

 

「デザインを次の世代へ」──MVVに込めた想い

インターオフィスが掲げたMission・Vision・Value(MVV)の3つの言葉には、これからの社会に向けて届けたい価値観と、その実現に向けた姿勢が込められています。

 

Mission|デザインを次の世代へ

創業以来、インターオフィスは世界中の優れた家具やデザインを日本に紹介し、空間に新たな価値を生み出してきました。私たちの使命は、そうしたデザインの背景にある文化や思想を未来へと受け渡し、社会にデザインの力と意義を広げ続けることです。

 

Vision|デザインを使い捨てない社会をつくる

インターオフィスが目指すのは、時代を超えて愛されるデザインの価値を次の世代へ引き継ぐことです。循環を前提とした事業を通じ、短期的な消費にとらわれず、長く使い続けられるデザインの価値を守り、継承していく社会をつくります。

 

Value|制約にとらわれず、独自の視点で提案し導く

デザインを使い捨てない社会の実現には、常識や制約にとらわれず、より良い可能性を探究する姿勢が欠かせません。私たちは一人ひとりが高いデザインリテラシーを持ち、見えない課題や小さな違いに気づき、独自の視点から社会や顧客に新たな提案を行い、実現へと導いていきます。

 

Knollショールームで展示された織田コレクションの名作椅子。インターオフィスはこれまでも長く愛される名作家具を広める活動を行ってきた。

 

MVVが生まれた背景とその意義

50周年と組織再編──言葉にすべきタイミングだった

 
インターオフィスのMVV(ミッション、ビジョン、バリュー)を刷新しようと考えた経緯を教えてください。

 

片居木:会社が50周年を迎えるタイミングで、会社の体制も変わり、「これからのインターオフィスはどうあるべきか」を改めて言葉にしたいと思ったのが、今回のMVVづくりの出発点でした。

インターオフィスは創業からずっと、世界中の優れた家具を日本に紹介し、その背景にある思想や文化まで丁寧に伝えてきました。特に創業初期の早い段階で、オフィス空間を扱うVitra や USM といったオフィス家具メーカーに出会えたことで、単に家具を売るだけではなく、ヨーロッパの最先端の働き方やその空間コンセプトを学び、日本に伝える役目を担ってきました。先進的な「働き方そのもの」を日本に提案するという役割は、会社としてずっと大切にしてきた指針で、これからも大事にしていきたいと思っています。

 

東京本社ショールームでのVitra「Club Office(クラブ オフィス)」の展示。このコンセプトは、サッカークラブやクッキングクラブのように、志を同じくする人々が集まるクラブでの活動をヒントにして生まれた。

 

片居木:一方で、最近では「欧米の最先端を紹介するだけでは足りないのでは」と感じる場面も増えてきました。コロナ渦以降に世界は大きく変化し、人々の価値観や、働き方、オフィスに求められる役割も以前とは異なってきています。もはやどの地域が進んでいるという単純な話ではなくなり、世界中の国々がこれからの働き方を模索しています。欧米の働き方や空間、デザインから学ぶだけではなく、日本国内の変化も含め、インターオフィスがそれらを解釈し、伝えていく役割を担うタイミングが来ていると感じています。

そして何より、今後、企業が中長期的に成長していくためには、サステナビリティの視点がますます欠かせなくなってきています。だからこそ、その視点を今、MVVの中心に置き、「私たちが目指す未来をきちんと示そう」と考えたのが今回のMVV刷新の大きなきっかけです。

 

 

オフィス市場を取り巻く環境はどう変わってきているのでしょうか?

 

片居木:これまでは“効率”が最優先で、家具の大量廃棄が当たり前のように行われていました。でも今は、社会全体の価値観が大きく変わってきています。「捨てることは良くない」という意識が広がり、企業にもCO₂削減が求められるようになりました。建物そのものは環境配慮型へと進化しているのに、そこで使われる家具だけ大量に捨てられていたら、やっぱり矛盾がありますよね。そうした流れも踏まえて、今回のMVVの考え方を整理しました。

 

 

前職でもサステナビリティ領域の事業に携わっていたとのことですが、個人的にもその方向性を強く意識していたのでしょうか?

 

片居木:そうですね。昔からサステナビリティの分野には強く関心がありました。個人的な興味はもちろんですが、ヨーロッパの企業で長く働く中で、ESG経営やSDGsの観点からも、サステナビリティが今後“企業の競争力を高めていく上でも必要なもの”だと強く感じていました。環境への配慮がきっかけとなり、結果として新しいビジネスの芽になっていく──そんな可能性があると考えていたので、前職でも自然とその領域に取り組むようになりました。

 

オフィス家具は“捨てられやすい”という問題

オフィス市場が抱えるジレンマ

 

新しいMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)について詳しく教えてください。

 

片居木:まず、今回つくったMVVは、これまでのインターオフィスの歩みを大切にしながら、これから目指したい未来をきちんと示すためのものです。

「デザインを次の世代へ」というミッションには、創業から50年にわたりインターオフィスが貫いてきた、「家具そのものだけでなく、背景にある思想やストーリーも含めて日本に紹介する」という姿勢が表れています。インターオフィスは、そういった家具の背景も含めて、胸を張って紹介できるものを選んできた自負があります。そうした私たちの企業活動を通じて、良いデザインを「次の世代につないでいく」。 そんな想いをミッションに込めています。

ビジョンは、「デザインを使い捨てない社会をつくる」としました。これは3〜5年かけて実現していくイメージです。いま業界内で大きな課題となっている“家具の大量廃棄”を減らし、循環型の仕組みを整えることで、「デザインがもっと長く、大切に使われる社会」をつくりたいと考えています。そのために、インターオフィスが現在取り組んでいる、サブスクリプション事業、買取、修理などの製品の循環に関わるビジネスの基礎となる部分をより強化していきたいと思います。

 

 

循環型の仕組みを整える上で、オフィス市場とインテリアマーケット全体における現状をどう見ていますか?

 

片居木:住宅とオフィスでは、家具の存在のしかたが少し違うんですよね。たとえば住宅であれば、「良いものを買って、修理しながら長く使って、次の世代へ受け継いでいく」という文化が醸成されています。特にヨーロッパにはそうした価値観が深く根付いていますし、日本でも昨今はそのように意識が変わってきたと感じています。

でも、オフィスとなると少し話が変わります。企業活動は景気や働き方の変化に敏感で、外部環境に合わせて最適化していくため、移転や縮小のタイミングで必要なオフィス空間が変わり、まだ十分使える家具が大量に手放されてしまうということが起こります。オフィス環境を取り巻くテクノロジーの進化も早いので、家具の機能が先に古くなり、テクノロジーに合わせて家具を入れ替える必要性が出てくることもあります。結果として、「まだまだ使えるのに捨てられてしまう家具」が、オフィス領域にはとても多いと感じます

 

 

 “サステナビリティ”は改善の取り組み、 “循環”は仕組みそのもの

サステナビリティ”と“循環”という言葉にはどのような違いがあるのでしょうか?

 

片居木:サステナビリティと循環って、同じように語られることが多いのですが、実は少し意味が違うと考えています。

サステナビリティ=改善の取り組み

サステナビリティとは、 再生素材を使ったり、修理やクリーニングで長く使えるようにするなど、持続可能性を高めていく取り組みのことです。

循環(サーキュレーション)=仕組みそのもの

一方で循環とは、一度使われた家具を捨てるのではなく、買い取り・修理・レンタル・サブスクなどを通じて再び使われる流れをつくること、その仕組みそのもののことを指します。つまり、“サステナビリティ”という、持続可能性を模索した改善の積み重ねの先に、 “循環する社会”が実現していく──そんな関係だと思っています。

 

 

最新の事例研究のため行かれたヨーロッパ視察で印象的だった点はありますか?

 

片居木:サステナビリティの取り組みは、この10年で本当に大きく前進していると感じました。ただ、すべてが順調というわけではなく、取り組み始めた当時は注目されていた施策が、実際にはうまく運用できずに止まってしまった例もいくつかありました。それでも、今回訪れた15社ほどの企業・大学・デザイン事務所に共通していたのは、みんな 「目指すゴールはぶれていない」 という点です。CO₂削減や循環型社会への移行といった大きな目標に向けて、試行錯誤しながら前に進もうとしている。その姿勢がとても印象的でした。

 

 

欧州を代表する家具メーカー「Vitra」の本社(スイス)にて。サーキュラーエコノミーに関するレクチャーの様子。

 

後編では、こうした思想を、インターオフィスがどのように事業として実装しているのか、fittingboxをはじめとする「デザインを使い捨てない社会」の実現のための取り組みについて深掘ります。

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