熱い議論の場を、1日でも早くー SMARTOON制作スタジオが家具サブスクを選んだ理由
スマートフォンをスクロールしながらフルカラーで読み進める「SMARTOON」。世界的な潮流となっているこのジャンルにおいて、2021年の創業以来、高いヒット率で頭角を現しているのが、カカオピッコマグループの制作スタジオ「株式会社シェルパスタジオ」様です。
若いクリエイターの才能を結集させ、魅力的な作品を日々送り出している同社。インターオフィスは、同社の初となる自社オフィスへの移転をお手伝いしました。その空間づくりの主役に選ばれたのが、弊社のオフィス家具サブスクリプションサービス「fittingbox(フィッティングボックス)」です。
最先端のデジタルクリエイティブを追求するスタジオは、なぜ「リアルなオフィス」にこだわるのか。急増するスタッフと将来の流動性を抱えるスタートアップにおいて、なぜ「家具を所有しないサブスクリプション」がフィットしたのか。
代表取締役社長の川崎様、上原子様、移転を推進されたカカオピッコマのファシリティ担当・李様との対談をもとに紐解きます。
写真左より李様、川崎様、上原子様
自分たちのアイデンティティを宿す空間を求めて
創業当初はカカオピッコマ様のオフィスに4名で間借りしていたシェルパスタジオ様。その後、目黒のシェアオフィスを経て、スタッフ数は20名へと急増しました。
さらなる成長を支えるには、他社と共用するシェアオフィスではなく、独自のアイデンティティを確立できる自社オフィスが不可欠でした。
「以前は、オフィスを尋ねられてもシェアオフィスの席なんです、としか言えず、独自の居場所を持ちたいという強い想いがありました」と川崎社長は振り返ります。
新オフィスの場所に選ばれたのは、若者とクリエイティブが集まる渋谷でした。以前から川崎社長がよく知っていた、街の中にたたずむ「ちょっと尖った建築」の一角。空き情報を目にしたとき、川崎社長は「ここならハマるかもしれない」と直感したそうです。
人気の物件だったため申し込みは「3番手」でしたが、先行していた上位2社がビルの工事制約から辞退されたため、劇的な繰り上がりでこの素晴らしいビルを射止めることができました。
しかし、ラッキーな巡り合わせの裏には「極めてタイトな納期」というハードルがありました。通常の移転であれば3ヶ月から4ヶ月かかるプロセスを、なぜここまで急ぐ必要があったのか。そこには、オンラインの長期化によって川崎社長が感じていた、クリエイティブ現場における強い危機感がありました。
対面での場づくりはクリエイターの「死活問題」
川崎氏「オンラインで会話することが増えると、どうしても『こぼれ落ちてしまうもの』があるんです」
SMARTOONの制作現場は、原作ノベルからシナリオを書き起こし、ネーム(構図やセリフ)の作成、作画、彩色、ディレクションに至るまで、完全に細分化された「分業システム」を採用しています。複数のクリエイターの知恵と感性が重なり合うことで、初めて1つの作品が完成します。
同社では、この分業システムを回すため「月曜日と水曜日を出社日」とするハイブリッドな働き方を導入しています。これには明確な理由があります。
川崎氏「絵の執筆やネームの作成は、本来個人が集中して行うべきものです。そうした作業は、自宅などリラックスできる環境で行う方が、絶対に質の良いものが生まれます。だからこそ、オフィスに集まる出社日には、普段の作業ではなくコミュニケーションに集中してほしいんです。オフィスに集まる理由はただ一つで、徹底的な『話し合いとチューニング』ですから」
月曜日に出社して「今週はこういう方向で行こう」とチームで意思を固め、自宅で作業を進めて水曜日に再び持ち寄る。そこで出来上がったものに対して「いや、違う。ゼロベースでやり直そうぜ」など、納得いくまで議論を戦わせる。これこそが、同社における作品づくりの真髄であるチューニングです。
このチューニングは、オンラインでは機能しませんでした。対面だからこそ伝わる微妙なニュアンス、ホワイトボードを前にした偶発的なアイデア、お互いの温度感の確認が、チームプレイの質を引き上げるために必要不可欠でした。対面によるチューニングの場を失うことは、作品のヒット率に関わる死活問題だったため、そのブランクの期間を1日でも短く、早く解消したかった。それこそが、この移転プロジェクトを短納期で進めることになった最大の理由でした。
シェルパたちが目指す、新時代のスタジオらしさ
社名である「シェルパ(道先案内人)」という言葉から、「山」というキーワードをデザインの連想に置きました。 渋谷の物件を初めて内見した際、目に飛び込んでくるのは、荒削りながらも温かみのある既存のタイルワークです。
その質感は、まさに険しい山に挑むシェルパの力強さを想起させるものでした。このタイルが持つ個性を活かしながら家具のコーディネートをすれば、十分にシェルパスタジオらしいクリエイティブな空間が作れる。私たちインターオフィスが提案したのは、そんな建物のポテンシャルを最大限に活かした空間デザインでした。
新しいオフィスのデザインを策定するにあたり、インターオフィスはこの「高い頂を登るシェルパ」というストーリーを空間で表現することを目指しました。もともと天井が高く、明るい光が差し込む素晴らしいスケルトン空間のため、造作壁は設けず、スタジオならではの開放的なクリエイティブ空間を演出しました。
川崎社長がこだわったのは、従来の古い「編集部」のイメージからの脱却でした。
川崎氏「編集部と聞くと、書類が山積みの古いオフィスをイメージする方がいるかもしれません。でも、私たちが作っているのは、これからの新しいデジタル漫画のスタイルです。それを作るスタジオが、古い価値観のままでいいわけがない。入った瞬間に『SMARTOONを作るスタジオって、こんなにかっこいい場所なんだ』と感じられる空間にしたかったのです」
読者層に近い若い感性を持つクリエイターたちが「ここで働きたい」と心から思える場所であること。優秀な若い人材をリクルーティングし、その才能を存分に発揮してもらうための「クリエイターファースト」の視点が、空間のしつらえや家具の選定において最も大切にされました。
スタートアップだからこそ家具もサブスクで
しかし、これほど高い理想を掲げたプロジェクトの前には、現実的な「予算」と「納期」の課題が立ちはだかりました。
限られた予算内で高品質な家具を揃えることは困難でした。何度もバリューエンジニアリングを重ねてコストカットを試みましたが、理想の空間クオリティには到達できず、答えが出ない状態が続いていました。さらに、前の入居者が置いていくはずだった家具が、退去時にほとんど残っていないという想定外のトラブルも重なりました。家具がなければ、オフィスの早期稼働は不可能です。
この窮地を救ったのが、李様のひらめきでした。
李氏「家具のサブスクリプションサービス『fittingbox』があったことを思い出したのです。これを活用してみたらどうかと考えました」
スタートアップ企業にとって、家具サブスクリプションには極めて強力なメリットがあります。 第一に、会計上「固定資産」にならず、初期費用も大幅に削減できる点です。予算承認がスムーズになり、こだわりたかった空間構成を諦めることなく実現できました。
第二に、成長スピードに合わせられる「高い柔軟性」です。 「スタートアップである私たちは、1年後に人がさらに増えているのか、予測が極めて難しい流動的な環境にいます。大ヒット作が出てすぐに別の場所へ移転するかもしれない不確実な状態で、高額な家具をすべて買い揃えて『所有』するのは経営上のリスクです。成長に合わせて家具を柔軟に交換・追加できるサブスクは、私たちのビジネスモデルに完全にドンピシャでした」と川崎社長は語ります。
さらに納期面でも、fittingboxは決定的な役割を果たしました。通常、海外ブランド家具は4週間以上の納期がかかりますが、国内にストックを持つfittingboxを活用することで、待ち望んでいたオフィスの稼働スケジュールに間に合わせることができたのです。
川崎氏「サブスクと聞いたときはチープなパイプ椅子が届くのではないかと懸念していましたが、インターオフィスさんが用意してくださったのは、世界中で愛されるデザイン性と機能性を兼ね備えた一線級の家具でした。社員の満足度も高く、本当に嬉しく思いました」
完成形を求めない、走りながら育てる冒険者たちの居場所
「いついつまでに完璧に完成していなければ、オフィスは開けられない」という固定観念が、日本のオフィスづくりには根強くあります。しかし、今回は違いました。 まずは今すぐに手に入る家具で『フェーズ1』としてオフィスを開け、事業をスタートさせる。そして実際にスタッフが働く様子を見ながら、後から最適な環境(フェーズ2)へと調整していく。「まずは動かしてみて、走りながら考えていこう」という、シェルパスタジオ様とカカオピッコマ様のベンチャーマインド溢れる決断があったからこそ、この短納期プロジェクトは実現できたのです。
この新しいオフィスは、そこで働く社員の心境にも大きな変化をもたらしました。上原子様は、その「体感」を次のように語ってくれました。
上原子氏「ピッコマのオフィスに間借りしていた頃は『ピッコマグループの一員なんだ』という意識がどこかにありました。それがこの渋谷の自社オフィスへ移転したことで、周りのスタッフの意識が『私たちはシェルパスタジオという、独立した一つのスタジオなんだ』という強い当事者意識、アイデンティティへと変わっていったのを肌で感じています」
さらに、人材採用の現場でも、このオフィスは効果を発揮しています。
川崎氏「去年の年末に入社したメンバーと『誰が来ても、大型バスが入るくらいに、自分たちが誇りに思えてのびのび働けるオフィスにしないとダメですよね』と話し、今回のコーディネートに決めました。今では、どんな優秀な候補者が来てくれても、何も恥じることなく『ここが私たちのスタジオです』と紹介できます。採用姿勢も大きく変わりましたね」
高い天井から差し込む光、クリエイターたちの熱い議論を支えるミーティングスペース、そして彼らのアイデアのチューニングを支える高品質な家具たち。シェルパスタジオ様のオフィス空間は、ビジネスとクリエイティブの成長に寄り添いながら、しなやかに姿を変え、進化します。その足元を、fittingboxはしっかりと支え続けていきます。
※「SMARTOON」は、株式会社カカオピッコマ商標または登録商標です。
(取材・文:fittingbox編集部)
